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Sep 09, 2004

著作権法改正。CD輸入制限

 合宿の際、著作権法改正の話を先生から振られたので、ちょっと調べてみた。

 問題となっているのは、「還流」CD。「日本のレコード会社」とライセンス契約をして「海外の会社」が製造した邦楽CDのことだ。こういったCDは、例えば『ドン・キホーテ』で売っている中国語のタイトルや歌詞カードの着いた宇多田ヒカルなどのCDがそれにあたる。

 なぜ、この還流CDが問題になるのか。大きな問題は「価格」にある。
 というのも、このCDの価格は、当然当該国の物価や製造コストなどが影響するので、国によって大きく違う。
 要するに、アジア諸国の方が物価が安い。とすると、同じCDでも国内で販売されているものより、アジア諸国でライセンス販売されているCDの方が安く販売されているわけだ。
 この海外での販売価格はだいたい日本の1/2~1/3程度らしい。当該国から輸入する際の諸経費を上乗せしても、日本での正規販売価格を上回ることはない。
 更に、このCDは正規ライセンス契約によって製造されたCDであることも重要な点だ。
 つまり、この還流CDは海賊版ではない。正規版である。音質などは、日本国内で販売されている日本版正規CDと代わりがないのだ。
 音質が同じで価格が違うCD。ユーザーがどちらを選ぶかは一目瞭然だろう。
 これでは国内版CDは売れなくなってしまうのだ。

 日本でこういった還流CDは年間約68万枚販売されているそうだ(2002年現在)。そして、これは10年後には1500万枚にまで増加するとの試算がある(三菱総研)。
 この試算を妥当性をどう見るかは経済学者に任せるとして、音楽業界に少なからず影響があることは確かだ。
 そこで、今回の著作権法改正となったわけである。

 ここで私には一つわからないことがある。
 単純に不勉強だからなのだが、著作権料というのはどういうふうに著作権者に支払われるのであろうか。
 というのも、文化庁が今回の著作権法改正に踏み切ったのは「還流CDの横行によって著作権者の権利が侵害されるのを防ぐ」という趣旨。だからこそ経済法ではなく、著作権法で対応したのだ。
 ということは、還流CDについては著作権料は支払われないか、もしくは低額になってしまうということなのだろうか。そういうことなら理解できる。
 しかし、還流CDにもきちんと著作権料が発生しているのならば、そもそもこのような改正は必要ない。そもそも著作権者の権利を侵害していないからだ。
 まあ、並行輸入が増えることでレコード会社の経営を悪化させ、しいては音楽業界を圧迫するという論法も可能だが、邦楽CD全体における還流CDの割合は0.4%。圧迫されるというには説得力が足りない。
 また、還流CDの驚異は単純に「価格」だけだ。現在日本では再販制度というものがある。いわゆる価格カルテルだ。それによって日本国内でCDは不当に高い金額で売られている。これを何とかすれば対応できるのではないかと私は思う。ライセンス契約そのものを変更することも可能だ。
 つまり何が言いたいか。
 今回の著作権法改正は、著作権者の保護よりもレコード会社の保護を目的としているのである。
 再販制度の形骸化阻止についてを問題視しているのは私だけなので、暗黙の了解ということか。
 まあ、再販制度の維持というのはCD小売店保護など、様々な問題も含んでいるので一概に論じることはできない。企業努力に期待するということで、ここでは議論しないことにする。

 そして、もう一つ疑問がある。輸入規制をするCDの線引きだ。
 法案は「ジャケットに国内での発売禁止が明示され、同一のCDが国内で発売されていること」としている。
 輸入CDはすべて禁止されるのではないか、という疑問が発生する。ここでいう輸入CDとは、洋楽CDも含めてということだ。上記基準では、一筆書けばいいだけなのだから、この洋楽CDまで該当する可能性が出てくる。
 つまり、本来還流CDのみを対象としていた著作権法改正が、すべてのCDの「輸入権」の問題に拡大する可能性があるということだ。
 洋楽CDも価格という面で並行輸入CDの影響を受けている。そういった点では、洋楽CDも今回の改正の恩恵を受ける権利があるかも知れない。
 しかし、よく考えてみると、それにはズレがある。
 というのも、還流CD輸入制限には、上記のように再販制度の形骸化阻止、つまり日本国内のCD販売価格の維持がという目的がある。しかし、洋楽CDは元々安価に海外で販売されているものであり、価格の維持の必要性はない。ここで還流CDと同じように洋楽CDも保護するとしたら、過剰保護もいいところだ。
 ネット上で主に議論されているのはほとんどすべて、このことについてである。少々過熱気味な感が否めず、的を射ていない意見も散見されるが、輸入権確立阻止にはこういった議論は有効だろう。
 もっとも、かつてMIDIの使用料徴収事件の際、私を含めた多くのMIDI制作者が出した意見書は、文化庁に見事に握りつぶされたので、あまり有効性は高くないかも知れないが・・・。
 しかしこれについては、付帯決議で洋楽CDに影響が出ないようにする旨明示されているので、これ以後は司法の判断による。



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Comments

ちょいと長くなるけど、一応書かせてもらいます。

まず、ライセンシーを与えている時点で、それに対する収入をレコード会社は得ているはずではないでしょうか。(同一のレコード会社は別として。)
それを考えるとしたら、現状でも、レコード会社は二重に利益を得てることになってないかと思います。

>このCDは正規ライセンス契約によって製造されたCDであるこ
>とも重要な点だ。
> つまり、この還流CDは海賊版ではない。正規版である。音質
>などは、日本国内で販売されている日本版正規CDと代わりがな
>いのだ。

次に著作権料についてですが、たぶん、これは総利益から諸経費を引いた純利益に対し、個々の契約により著作権者に対しいくら支払われるのかが、決まるのかと思います。

>著作権料というのはどういうふうに著作権者に支払われるのであろうか。

最後に自分なりにこのことについて書いてみます。

この還流CD問題については、過度に著作者の権利を主張しすぎているのではないだろうか。
現に洋楽CDについては輸入盤と国内盤では国内盤のみのボーナストラックなどを付け、同じCDに差をつけている。
また、レンタルでは洋楽CDは発売日から1年後にレンタルが許可されるのに対し、邦楽CDはしいて言えば、2~3週間後である。
レコード会社は販売することを目的としてCDを作成しているのか、レンタルしてもらうのを目的にしているのか、いかんせん、不可思議である。
ここで一つの案として、還流CDも国内盤も同じ価格にするのはどうだろうか。
もちろん、著作権者の権利を守る為、レンタル開始期間を現状よりも長くしたり、販売することを目的としたりしても、「価格」が安いのなら消費者も購売意欲も今より出るのではないかと思われる。3000円の物を1枚売っても、1500円の物を2枚売っても、利益は同じである。

こういったことも可能であるのに対し、企業努力もせず、ただ単に権利の主張のみを述べても、消費者は困惑するのみであろう。

まして、このように過度に権利を主張することで、著作権法第1条の規定にあるように「…もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
という、最終的な著作権法の目的に矛盾するのではないだろうか。

ちなみにレコード会社も「著作隣接権」という概念で著作権法で保護されています。

Posted by: sakaki | Sep 09, 2004 at 07:51 PM

しまった。
文章がメチャクチャだ・・・。
(今更推敲するなって)

それにしても、著作隣接権とは。完全に失念(笑)
そんなんだから、知的財産法の単位落とすんだよな・・・。

>まず、ライセンシーを与えている時点で、それに対する収入をレコード会社は
>得ているはずではないでしょうか。(同一のレコード会社は別として。)
>それを考えるとしたら、現状でも、レコード会社は二重に利益を得てることに
>なってないかと思います。

二重にはなっているとはどういうこと?


>レンタル

については、わからないので黙秘(笑)


>ここで一つの案として、還流CDも国内盤も同じ価格にするのはどうだろうか。

還流CDはもはやレコード会社の手を離れているので、価格の指定は無理でしょう。
仕入れたものをいくらで売るのかは売り手に委ねられています。
だいたい、それをやったら公正取引委員会が出てきます。


>もちろん、著作権者の権利を守る為、レンタル開始期間を現状よりも長くした
>り、販売することを目的としたりしても、「価格」が安いのなら消費者も購売
>意欲も今より出るのではないかと思われる。3000円の物を1枚売っても、
>1500円の物を2枚売っても、利益は同じである。

賛成。
再販制度の維持価格を低くするとか、期間を1ヶ月にするとか。
もしくは再販制度を撤廃するのもあり。
価格が下がればCDはもっと売れると思う。


>最終的な著作権法の目的に矛盾するのではないだろうか。

あれ?文化庁って文化を衰退させるための機関だったんじゃw

Posted by: みやっち | Sep 09, 2004 at 08:43 PM

>二重にはなっているとはどういうこと?

とりあえず、訂正。現状じゃなくて、もし認められた場合に二重に利益を得るってことね。

これについては俺もまだ深く勉強してないから、はっきりしたことが言えないんだけど、確かベルヌ条約で内国民待遇って言う考えがあって、締結国の国民が作成した著作物は他国においても、その他国の国民と同じように保護されるはずじゃなかったっけ?
確かそうだと思ったけど。
ってことは、今の得られる利益はライセンス承諾料+海外における著作物の使用料でしょ?まして、今は正規品として侵害行為の対象として除外されているけど、もし認められた場合、113条1項の1号、2号の要件を満たすと思うんだ。
だから、ライセンス承諾料+海外における著作物の使用料+侵害行為に対する損害賠償請求の部分で利益を得られるよね。
でも、海外の企業にライセンシーを与えておきながら、自国に入ってきた際にはそれに対し、損害賠償などの民事的制裁を加えるって言う矛盾から、俺は「二重の利益」って表現したんだけど、ちょいと分かりにくかった。すまん。

てか、明らかに権利の乱用になりかねないよ、これじゃ。

Posted by: sakaki | Sep 10, 2004 at 03:13 AM

ライセンス収入→レコード会社
著作物使用料→著作権者
なんじゃないの?
だから、2重取りにはならないんじゃ・・・。
もしかして、俺また勘違い?

侵害行為については、元々ライセンス契約に当該国内での売買に限るといった項目が普通あるはずだから、ライセンシーを持ってる会社は輸出しないだろ。するのは貿易会社だ。
だから、困るのは並行輸入してる会社。

そういえば、この改正は個人輸入も危ないらしい。
まあ、一度に数十数百枚単位で勝った場合だけどね。

やっぱ、過剰だよな。

Posted by: みやっち | Sep 12, 2004 at 01:21 PM

こちらこそトラックバックありがとうございます

わたしも輸入権に関して詳しくないので細かいことは言えませんが、いわゆるバッタもの(偽ブランド)と似て非なる問題のように感じます。
安い粗悪品は買えない人も多いでしょうが、安い良品はみんな買いますよね。

Posted by: Hazel | Sep 13, 2004 at 09:37 PM

そうねえ。
たぶん、その考えで合ってるかと。

>ライセンス収入→レコード会社
>著作物使用料→著作権者
>なんじゃないの?
>だから、2重取りにはならないんじゃ・・・。

でも、隣接権からも著作物使用料を請求できるんじゃないかな?
俺もくわしくはわからんので、直接、上野先生にメールで聞いてみてもよいかとw

Posted by: sakaki | Sep 14, 2004 at 12:36 PM

>Hazelさん

>安い良品はみんな買いますよね

そうですよね。
私としては、輸入云々を問題にするよりも、現在の流通価格を問題にする方が先かと。
こと芸術の分野では、日本は世界からだいぶ遅れてますよね。
レコード会社もありますが、やはり芸術を管理する政府機関が天下り完了によって運営されているのが原因の一つでしょうか。


>sakaki殿

>隣接権

のことは、俺は全くわからん。
ということで、上野先生に聞いたところで俺は沈没する。
それに、俺は今金融整理管財人で手一杯だ。
sakakiがまとめてくれること希望。

Posted by: みやっち | Sep 14, 2004 at 06:04 PM

了解しました。わかりにくいが勘弁してちょ(はぁと。)

まず、著作隣接権とは実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者の4者が保護されます。(89条1項から4項)

そして、レコード製作者の権利としては、著作隣接権として、「複製権」「送信可能化権」「譲渡権」「貸与権」が保障され、請求権として、「放送二次使用料を受ける権利」、「貸レコードについて報酬を受ける権利」が保障されています。
また、隣接権は著作権とは別々の権利と規定されています。(90条)


で、問題になってるのは「譲渡権」だと思うんだけど、
現行法では一度、適法に許諾を受け譲渡されたレコードについては、その後の譲渡に権利を主張することは出来ないとされてます。
理由は簡単。
適法に譲渡された後の各譲渡行為に譲渡権を働かせると、流通に混乱をもたらし、取引の安全を害する恐れがあるからだそうです。

これを改正するってことは、つまり、日本国は、
「消費者の利益」より「レコード会社の利益」を重視した
ってことだよねw


【余談】
でね、最近、青学大の半田先生の本を読んでるんだけど、そこに『…レコード製作者および放送事業者の権利はそれぞれの独占的利益の確保による企業の維持といった側面が強調されているようである。』って書いてありましたw

Posted by: sakaki | Sep 15, 2004 at 02:42 AM

解説さんくす。
隣接権のことはわかった。
こいつは複雑で厄介だな(汗


>譲渡権

そうねえ。これが確立してるから、並行輸入とかもOKなんだろ?
まあ、日本の著作権法は矛盾だらけということか。
この分野は金で正義が買えるからなあw

sakakiが弁理士としてここに一石を投じてくれ。

Posted by: みやっち | Sep 15, 2004 at 01:20 PM

いや、まず弁理士に受かるか分かりませんから、まずは弁理士試験に合格せねばw
その足掛けに知的財産検定2級からがんばります。

Posted by: sakaki | Sep 15, 2004 at 11:13 PM

がんばれ!
俺は、弁護士になるべく法科大学院入試を頑張ります。

Posted by: みやっち | Sep 16, 2004 at 02:41 AM

ラスト!!!
今回の著作権フォーラムの記事です。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2004/09/17/4697.html

Posted by: sakaki | Sep 19, 2004 at 02:19 PM

まあ、なんというか。
┐(-д-)┌

Posted by: みやっち | Sep 20, 2004 at 03:32 AM

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